第一章-2、鬼火までの道(チップス)

序盤1

茜里「吹雪の結界は綺麗じゃのう」

吹雪「ふふ、もともと夜桜家の結界術は、盾の硬さより細かさが売りなのよ」

礼士郎「造型美術としても昔から有名だからな」

序盤2

吹雪「流々のドローンやばいな」

流々「苦労して改造したからね。楽して戦うために」

茜里「楽するために、苦労するとは滑稽じゃの」

序盤3

礼士郎「さすが切り込み隊長だな、茜里」

茜里「速さなら誰にも負けぬ!」

流々「足の速さのために、頭の速さを犠牲してるもんね」

茜里「うぅ……等価交換なのじゃ」

中盤1

吹雪「前から思ってたんだけど」

礼士郎「ああ」

吹雪「私らに戦わせて、高見の見物むかつく」

礼士郎「お、俺も戦おうか?吹雪さん」

吹雪「いいわよ。あんたみたいな文化系はひっこんでなさい。邪魔だから!」

礼士郎「……いつも守っていただきありがとうございます」

終盤1

流々「礼士郎、あれ見て」

礼士郎「ああ……」

吹雪「青い……火の玉」

茜里「校舎の周りをゆらゆらとのぼっておるのう」

礼士郎「本当にいるようだな」

吹雪「みんな油断しないでね」

礼士郎「ああ、いくぞ!」

第一章-1、心霊戦隊部(ADVマスト)

殺してやりたい。

「おーい、礼士郎。一緒に帰ろうぜ」

幽霊を、殺してやりたい。

礼士郎「あーすまん、今日は部活だから。またな!」

死後、幽霊になれる確率……0.000006%。

礼士郎「やべ、放課後ちょっと話しこんじまった」

人間が幽霊になった時の平均寿命……14年。

礼士郎「部活の集合時間過ぎてんな……」

公立、恩年高校(おんねんこうこう)
この20年以内に”七不思議”による犠牲者……42人。
※当部調査の推定(自殺、事故、行方不明者より)

礼士郎「あいつらどうせ……」

だから、俺は幽霊を殺してやりたく……

礼士郎「怒ってんだろうな」

この”心霊戦隊部”を作ったんだから。

“心霊戦隊部”と書かれた部室のドア。
ガラッと開く。

礼士郎「すまん、みんな遅くなった!」

🔶プロフィール画面
名前:橘礼士郎(たちばな れいしろう)
役割:心霊戦隊部 部長
能力:霊媒師

吹雪「おっそいなー、もうみんなとっくに集まってるよ」

🔶プロフィール画面
名前:夜桜吹雪(よざくら ふぶき)
役割:心霊戦隊部 副部長
能力:結界術

不機嫌そうに肘をつく吹雪ににらまれる。今日も不機嫌は絶好調だ。

茜里「まあまあ吹雪、憤ることではない。
殿方が遅れることは、よくあることじゃ」

🔶プロフィール画面
名前:氷野茜里(ひの あかり)
役割:心霊戦隊部 雑用係
能力:剣術(木刀)

上機嫌で俺を見つめる茜里。俺が来たことに心底嬉しそうで可愛い。

礼士郎「茜里、お前の口調ほど時代に遅れてることもないがな」

茜里「ぬぬ……気にしてるのに」

流々「へー、庇ってくれた相手にいちゃもんって器小さいなー
器小さい部長ヤだし、退部しよっかなー」

🔶プロフィール画面
名前:星屑流々(ほしくず るる)
役割:心霊戦隊部 記録係
能力:情報収集(ネットサーフィン)

流々はタブレットを横に持ち、高速で指を動かす。俺を一目も見ないまま、ローテンションで毒づく。

礼士郎「ちょ、ちょ、ちょっと待てよ。流々、お前に辞められたら詰む。
一旦考え直してくれ。
そして部活始めるから出来れば音ゲーも止めてくれ」

吹雪「ぐだぐだやってないで、話始めなよ。
どうせ、2組の男子が噂してたやつでしょ?」

礼士郎「そう!さすが吹雪!」

吹雪に顔を近づける。

ゴン!

額に痛みが走った。

礼士郎「いったああ!」

目の前に透明な壁。吹雪の結界だ。

吹雪「近いのよ!男子なんだから近づかないでよ」

男子嫌いの吹雪は、リアルにガードが硬い。

礼士郎「ひでえなあ。クラスメイトにその噂を聞きこんでたから遅くなったのに」

額をさする。

茜里「時に、れいしろー!質問よいかの?」

茜里の手が真っ直ぐ上がる。

礼士郎「ああ、何だ?」

茜里「スマホで実況動画を観たいのだが、意図せぬ動画に切り替わってしまい困っておる」

礼士郎「何でこのタイミングで動画見始めんだよ!
かせ!……これ、広告だって教えただろうが!」

茜里「広告とな?」

礼士郎「ああ、ちなみに何が観たかったんだ?」

茜里「種子島を構え敵国へ参る動画が面白くてのう」

礼士郎「FPSかよ。てかお前、FPSなんて観るのか」

絶対、流々の影響だな。

吹雪「ねえ……もう帰っていい?」

流々「辞めてもいい?」

礼士郎「すまんすまん!
ちゃんと本題に入ろう。
茜里は動画はあとな」

俺は5つある机と椅子の一脚に座った。

―暗転―

茜里「‟鬼火”が出ると?」

流々「……ふーん」

礼士郎「ああ、今日クラスの松浦が先生に提言したんだ」

吹雪「松浦って、女子委員長じゃん。何て?」

礼士郎「”連日、校舎の屋上で青い炎が漂っているのを複数の生徒が見た。不気味なので文化祭の後夜祭では屋上の解放はとりやめるべきだ”
……ってな」

茜里「ま、その方がいいのう」

礼士郎「それに対してユウシが怒っててな」

吹雪「ユウシくん?うちのクラスの?」

茜里「何故じゃ?」

流々「……後夜祭の告白?」

礼士郎「ああ、そういうこと」

茜里「む、何だそれは?」

礼士郎「2年の途中から来た茜里は知らないわな。
くだらん噂だが、後夜祭中に屋上で告白すると成功するって都市伝説がこの学校にはあるんだ」

吹雪「ユウシくん、後夜祭で辻ちゃんに告白するって言ってたなそういや。
辻ちゃん学年トップだもんね……男子人気の」

流々「でもさー‟七不思議”の中に鬼火を使う幽霊なんていないよ?
いるとしたら、もしかしての……」

ごくりと唾を飲む。

流々「誰も知らない七つ目のかもしれない」

礼士郎「調査担当のお前もそう思うか。
そう、もしかしたら七つ目かもしれない。
だからこそ……」

流々「だからこそ?」

礼士郎「今夜、調べに行く」

吹雪「は?今夜?いきなりじゃない」

礼士郎「ああ、文化祭は来週だ。今週中に潰しておく必要がある」

流々「やだ。残業反対」

茜里「むむ、これはまた流々の退部の脅しか?」

礼士郎「みんな聞け……」

俺は一息つき、言い放つ。

礼士郎「部長命令だ!今夜屋上を調査する」

しん、とする。

吹雪「……わかったわよ」

茜里「うむ、了解した!」

流々「……部長命令なら仕方ないなぁ」

礼士郎「わかったな?
鬼火が出るのは20時だ。
みんな、準備してくれ」

全員立ち上がった。

ー暗転ー

22時前。一度部室の鍵を顧問の先生に返し、帰宅したフリし、あらかじめ鍵を開けておいた窓から部室で夜を待った。
いつもパトロールするやり方だ。

礼士郎「そろそろ、行くか」

流々「うーん……校内の霊。今日多いみたい」

タブレットを覗く流々。

茜里「骨が折れるのう。七不思議クラスか?」

流々「んーん。ザコばっか」

吹雪「だからって油断出来ないけどね」

礼士郎「よし!ではパトロール前に復習だ。
はい、茜里!ゴーストルールの第一条は?」

ゴーストルールとは、うちの部が見つけた幽霊の法則だ。

茜里「む!しばし待たれよ。えっと……
広告はスキップボタンで飛ばすか……課金をすることで」

礼士郎「……お前に聞いた俺がバカだった。
第一条、幽霊を殺すには‟うつわ”を破壊すること、だ!」

茜里「う、うつわ?」

流々「えっとね、人間とは肉体に魂が結びついた状態のこと。
で、肉体が破損……つまり死ぬことで、魂は消滅してしまう。
でも、消滅する魂が肉体とは別の”何か”と結びつくことで消滅を免れること。
これが幽霊発生の原理」

茜里「……左様か」

吹雪「ちなみにその結びつく‟何か”、通称‟うつわ”は、その人のゆかりある持ち物や場所になるケースが多い。地縛霊や守護霊がその類。
まあこの学校の幽霊のほとんどは学校がうつわみたいだけどね」

礼士郎「言っとくが、5回も教えてるからな」

茜里「今度こそ理解した!」

礼士郎「それも4回聞いた」

吹雪「流々」

流々「ん?」

吹雪「そのザコって何の幽霊なの?」

流々「んー多分、虫とか植物だと思う。めちゃくちゃいるよ」

礼士郎「何でだよ!」

流々「前に死後、幽霊になれる確率は0.000006%だと発表したけど……」

茜里「うむ」

流々「この恩年高校の敷地内で死んだらほぼ100%、幽霊になるからかな」

吹雪「はあ、やっぱりそうか」

茜里「緑や昆虫の類まで幽霊となるなら、その数も甚大となろうな」

礼士郎「幽霊は日の当たるところでは存在出来ないとしても、夜のうちに駆除しておく必要がある。ザコ幽霊を倒しながら、屋上の鬼火を目指そう」

茜里「御意」

ー戦闘スタートー

オープニング、怖い話

怖い話?

私、あんまり知らないんだけど……

そうだなー……

恩年高校って知ってる? 昔から事故や自殺者の多いあの呪われた高校。

そこのね、入試1位だった女子生徒の話なんだけど……
新入生代表の挨拶もしてて、容姿端麗、気配りも出来て、すぐにクラスで人気者になった。
しかしある日、その女子生徒が校内で死体で発見された。

なんで死んでたかって?

3階の音楽室から落下したみたい。
事故なのか自殺なのか不明みたいだけど……
全身の骨が粉々に砕けてたんだってさ。

3階から落ちてそこまでなるって?
うんうん、私もそう思うよ。不気味でしょ?

でね。
その子、クラスの人気者だったからみんな悲しんだの。当然よね。

そしたらさ、その数日後にクラスの1人にメールが届いたの。

誰からなんて来たと思う?
なんと、その死んだ女子生徒からだったの!
誕生日おめでとうって。その子、誕生日だったから。

その後もね、クラスメイトの誕生日のたびにその子からおめでとうメールは届き続けた。

ね、怖いでしょ?

ふふ、でもね、どうやらね。
それ、ただの時間指定メールじゃないかって話になったの。

時間指定って知ってる?
いつの何時何分にメールを予約送信出来るシステムのこと。

つまり、どういうことかっていうと。

その子、あらかじめクラスメイト全員の誕生日におめでとうメールを設定していただけだったの。
誰も漏れがないように。どんな状況でも必ず当日に届けてあげられるように。

うん、めっちゃいい子でしょ?
なんか泣きそうにならない?
クラスメイトの誕生日、全員分把握して……
そこまでクラスのみんなが好きたったんだね。

クラスのみんなは、自分の誕生日が待ち遠しくなった。彼女の死後も思いを受け取れるから。

感動的な話でしょ?

……私も、最初ね。
聞いた時そう思ったの。

でもね……

話はまだ終わってなくて……

あのね……

実は……

そのメール……

本当は……