第一章-9、うそぼうの死(ADV 別途)

クラスメイトが死んだ。
最初はみんな驚いていた。泣いていた。
なのに何日か経てば、みんな笑顔に戻っていた。
最初からそんな子いなかったように……

嫌だ……
そんな風に死にたくない。

幼い頃に、いつか自分が死ぬことを知った時の恐怖心。
死んだらどうなるのかわからない怖さ。

僕が死ぬことは仕方ない。
仕方なくとも、せめてみんなが悲しんでくれるような人間になるんだ。

もっと昔。授業中、先生に当てられた。
自信満々に言った答えは、大きな間違いだった。

赤面する僕の周りで起きた爆笑の波。
全クラスメイトが、先生が僕に笑いを向けてくれている。

恥ずかしい……どうして今までそんな風に考えてたんだ。

これだ!
勉強も運動も得意じゃないなら、失敗でアピールすればいい!

これなら僕でも、みんなに必要としてもらえる!

プール授業。
僕は溺れたふりをしてみた!
みんな焦ったが、すぐに冗談だと打ち上げる。

笑いの波。
楽しい……
みんなが僕を必要としてくれている。

僕はどんどん溺れたふりが上手くなった。

しかし……

ある日の水泳の授業で……

急に足が動かなくなる。
つってしまった?そう思うのも束の間、すぐに沈み始める。

「ぶば!!た、たすけ!」

水を飲みながら、発した言葉に周りは……

「あはははは!!」

笑っていた。

「ち、ちが!うぶ!」

違うんだ!本当に足が動かないんだ!

「た、たす……」

「あははは!!」

水の中から見えるクラスメイトの笑い顔。
空気のあるところで、爆笑の波が起こっていた。

「がぼ……ごぼ」

苦しい……
息が出来ない!

視界がぼやけ、目が血走る。

苦しい!苦しい!苦しい!
肺に水が入り、内蔵が冷たくなる。

「……が」

苦しい……空気……
空気!……助けて……苦しい……

もがく手がどんどん弱くなる。

恐怖。
自分の死が見える恐怖心。
涙すら、苦しい水の中へ消えていく。

足だけじゃなく、腕が頭が……
動かなくなる。

血が巡ってないのか体が冷たくなる。
水のように、冷たい。

脳にまで、水が入ってくるような苦しみの中……

「あはは!あははは!!」

笑い声が聞こえた。

……

何で?

僕は……
死んだ時にみんなが悲しんでくれるような存在になりたくて……

ただそうなりたかっただけなのに……

「あははははははははははははははははははははははははははははは!!」

何で……
僕が苦しんで死ぬ中、みんな笑ってるの?

瞬きすら出来なくなった僕は、水底にゆらゆら横たわる。

もう苦しくなかった。
もう怖くなかった。

もう……何も感じなくなった。

暗い……

みんなどこ?

水の底は、冷たくて、誰もいない。

寂しい……

ずっとこのままなのかな。

最期に聞いた笑い声すら懐かしい。

「はは」

誰か……

1人は辛いよ……

ねえ、誰か……

一緒に、アそぼうヨ……

「あはは……はは」

僕は手のひら……
水底でゆらゆら、何かを探し漂っていた。