第一章-4、水底のうそぼう(ADVマスト)

放課後。俺は教室の花瓶の水を入れ替える。

礼士郎「あー、また部活遅刻だな」

今日は花当番の日だからだ。
早く部活に行きたいが、サボることはありえなかった。

礼士郎「これでよし」

花瓶の水を入れ替え、菊の花を綺麗に整える。
そしてある席の上に置く。

礼士郎「……」

目を閉じ手を合わせる。

吹雪「暗くなってきたね」

吹雪「?……流々、何してんの?」

流々「ん?あいつ遅いから、壊れたドローン修理してるの」

吹雪「ドローンって、屋上で破壊した?」

流々「うん。可哀相だから、連れてきちゃった」

吹雪「捨て猫か!動くの?」

流々「うん、多分ね」

茜里「吹雪……少しよいかの?」

吹雪「どうしたの?茜里ちゃん」

茜里「スマホが、動画を写さなくなってしまったのじゃ」

吹雪「どれどれ?」

茜里「からくりが外れたかの?」

吹雪「あー多分、これ速度制限ね」

茜里「速度制限?……病の類か?」

吹雪「動画の見すぎよ。ちょっと控えないとね」

茜里「むう……」

ガラッ

礼士郎「わりい!遅くなった!」

吹雪「遅い!」

流々「次遅れたら、辞めるぞー」

茜里「れいしろー、速度制限を退治してくれぬか!」

礼士郎「もう騒がしいな!今日は花当番って昨日言ったじゃねえか」

吹雪「あ、そうだったね。ご苦労様」

礼士郎「こんなんで、今夜大丈夫か?
次は七不思議の1体と接触する予定なんだぞ」

茜里「む、そうなのか?どの敵と相対すると?」

礼士郎「前から言ってたろ!」

流々「とりあえず”水底のうそぼう”からね」

茜里「水底のうそぼう?」

流々「うん、七不思議ランキング5位の幽霊」

七不思議ランキングとは、七不思議を
”遭遇率 × 対峙生存率 × 実際の犠牲者数”
で計算した指標。ようは危険な幽霊ほどランキングは高い。
情報屋の流々が作成した。

吹雪「5位か……まあ下位ってことね」

茜里「初陣ゆえ、それくらいがよかろう」

流々「出る場所はプール。0時以降に現れる」

吹雪「どんな幽霊だっけ?」

流々「水泳の授業中に、生徒の足をひっぱる奴。水泳帽を被った少年の幽霊で、血走る目で不気味に笑う顔が特徴的。
水底を確認しようと水中に潜った瞬間に目の前に現れて、水の底にひきずりこまれるって噂」

礼士郎「水泳部で、すでに犠牲者が出ている」

流々「0時にプールにいくと、誰かが溺れているの。
絶対に飛びこんで助けに行っては駄目。水の底にひきずりこまれて二度と浮かんでこれないから」

吹雪「……こわ」

茜里「しかしそやつで5位か。
……まあ勝てる敵から、攻めるのが定石か」

吹雪「部活立ち上げ当初、いきなり調子に乗って嫌な思いしたことあるからね」

茜里「そうなのか」

吹雪「ね、橘」

礼士郎「……ああ」

流々「0時まで待つ感じ?」

礼士郎「ああ、0時前までこの部室に隠れて、その後出撃でいこう」

茜里「御意」

吹雪「了解」

流々「ブラック部活、反対」